2019年10月スタートのオトナの土ドラ『リカ』。
『第2回ホラーサスペンス大賞』大賞受賞作、五十嵐貴久さん原作の『リカ』が高岡早紀さん主演でドラマ化されます。
原作小説のファンからは、「えっあのリカがドラマ化するの?リカだよ?たのしみ」「10月からの新ドラマ「リカ」って、あのリカ?!五十嵐さんのリカ??超こわいじゃん!見よ!」「見たいけど怖い」など、「怖すぎる」と話題になったベストセラー小説のドラマ化だけに、大きな期待の声が上がっています。
ドラマ版『リカ』は、小説『リハーサル』を原作にした、小池徹平演じる医師が狙われる「第1部」。そして『リカ』を原作にした、大谷亮平演じる映画プロデューサーがターゲットとなる「第2部」の2部構成です。
公式サイトのあらすじを見ると、いくつか原作との違いがあるようです。どのような違いがあるのでしょうか。また、原作小説の結末から、第1部のラスト、第2部の最終回がどのような形になるかも予想してみます。
これ以降、原作小説のネタバレが含まれています。原作小説『リハーサル』『リカ』をこれから読みたいと思ってたり、ドラマをネタバレなしに純粋に楽しみたいならば、これ以降は読まないでください。
また、原作小説は、かなり『グロテスク』要素があります。そんな内容にも触れますので、『グロ』いものが苦手ならば、ここで、そっと読むのを止めてくださいね。
では、原作小説の内容とドラマの比較に進みましょう。
ドラマの主役「リカ」原作との大きな違い
まずドラマの主役「リカ」ですが、原作小説では見た目がだいぶ違います。小説『リハーサル』では、リカは、「顔色が悪い」「長い黒髪」の「背の高い痩せた女性」として描かれています。
『リハーサル』から数年後を描いた小説『リカ』では、更に凄まじい描写。「その顔は、ひとつひとつのパーツを見る限り美しいものだった、だが、そこにあるのは美の残骸だった。」「並外れて痩せた肌の色はまるで泥のようだ。」「やつれた顔には表情がなかった」「そして何より私を脅えさせたのが、女の瞳だった。その目には光がなかった」。高岡早紀さんのイメージとはだいぶ違いますね。
ドラマの予告編を見ても、特殊メイクで恐ろしい見た目にしている様子もなく、美しい高岡早紀さんです。「腕に痣がある」というのが新たに加わった設定ですが、なにかの謎を秘めている事を感じさせますが、それだけで恐怖を感じることはないでしょう。
また、原作のリカは、「腐った卵に酢を混ぜたような」すさまじい体臭の持ち主として描かれ、それが本能的な恐怖につながっています。一方、ドラマの公式サイトには「体臭」について書かれていないので、そのような設定もカットされたのでしょう。
原作小説『リカ』は「ホラーサスペンス」大賞作品ですが、ドラマの『リカ』は「サイコスリラー」として紹介されています。原作の『リカ』は恐ろしい見た目で酷い体臭の、モンスター「リカ」に迫られる「ホラーサスペンス」であるのに対し、ドラマの『リカ』は、外見は普通の美しい女性なのに、精神的には恐ろしいものを抱えている「リカ」に破滅させられる「サイコスリラー」ということなのでしょう。
第1部 原作との違いとラスト予想
原作小説『リハーサル』との違い
ドラマ『リカ』第1部の内容は、公式サイトによるとこのようになっています。
都内にある花山病院。規模は小さいが、入院設備も整い地域医療を担っている。そこに看護師として雨宮リカ(自称28)/(高岡早紀)が採用された。
副院長で外科医の大矢昌史(34)/(小池徹平)は、優柔不断なところもあるが腕は確か。将来を嘱望される病院のエースで婚約者もいる。しかし、昌史はリカにとっての運命的な出逢いをしてしまう。そう、リカは「運命の相手」として、昌史に目を付けて病院に入り込んだのだった。
すると、花山病院で不可解な事件が続く。消えていく患者、看護師、医師たち…。そして、昌史の婚約者にも伸びるリカの魔の手。果たして、リカの狂った愛情の終末は…?
この内容は、ほぼ原作どおりの展開です。ただ、原作では、副院長の大矢昌史が、病院の入口に「看護師募集」張り紙をしたことで、リカが面接に来たことが始まりでしたが(大矢は後に、この張り紙をしたことを大きく後悔することになる)、「昌史はリカにとっての運命的な出逢いをしてしまう。そう、リカは「運命の相手」として、昌史に目を付けて病院に入り込んだのだった。」ということなので、リカは病院に来る前に大矢を知っており、意図的に近づいたことになります。
また、原作では、リカの仮採用は大矢自身が決めたことですが、第一話のストーリー紹介では、「大矢の叔父であり、脳梗塞を発症して以来特別病室で生活する病院長・花山大次郎(西岡徳馬)は、医師協会前会長の推薦状を持ったリカを断る事は出来ないと仮採用を決める。」となっています。
ドラマの「リカ」は、用意周到に大矢に近づいており、大矢にとっては為すすべもなくリカの術中に嵌っていく姿が、より恐ろしさを感じます。
第2部 原作との違いと最終回予想
原作小説『リカ』との違い
公式サイトでは第2部の「あらすじ」がこのように紹介されています。
―3年後。
映画会社のプロデューサー・本間隆雄(40)/(大谷亮平)は、妻の浮気が原因で別居中、愛する7歳の一人娘とも離れて暮らしていた。
ある日、仕事上のリサーチのため「メールで文通ができるマッチングアプリ」に登録する。そこにハンドルネーム<リカ>を名乗る女性からメールが。しばらく文通が続き、本間は仕事目的で<リカ>に会ってみようと提案する…。これが地獄への入り口、破滅の幕開けだった。
以来、本間の携帯には、おびただしい数のメール、着信が。会社に自宅に、リカの執拗なストーキングが続く。
本間の同僚、探偵、刑事、そして妻と娘と周囲を巻き込んだ壮絶なストーリーは、予想外の結末を迎えることになる。
原作小説『リカ』とは、かなり設定が変わっています。原作の本間隆雄は印刷会社勤務ですが、ドラマでは映画会社のプロデューサーになっています。この変更の意図は不明ですが、ドラマなので仕事の見た目を派手にしたかったのかも知れません。
それより大きく変わっているのは、原作では本間が出会い系サイトに登録したのは浮気目的でしたが、ドラマでは「仕事上のリサーチ」が目的。リカに会おうとしたのも仕事目的です。
原作小説では遊び目的だったため、本間が追い詰められていく様子も、自業自得感がありましたが、ドラマでは仕事での接近なので、真面目に仕事に取り組んでいただけなのに、リカと出会ったために破滅に突き進んでいく絶望感がより強くなりそうです。
また、原作では仲のいい夫婦でしたが、ドラマでは「妻の浮気が原因で別居中」の設定。この変更はストーリーに大きく関わってくるのでしょう。
小説『リカ』の結末
原作小説『リカ』は以下のような結末を迎えます。
- リカの調査をしていた本間の知り合いの探偵、原田が殺されバラバラ死体で発見される。その縁で、本間は刑事の菅原に出会う。
- リカの本間へのストーキングはエスカレートし、ついに本間の娘にも及ぶ。本間の娘は誘拐され、その後、両親の元に戻ったものの、ショックで失語症になってしまう。
- 本間はリカとの決着をつけるべく、リカを営業終了後の豊島園の駐車場に呼び出す。リカに警察へ行くよう説得するが、話が通じないため、持ってきたゴルフクラブでリカを殴り気絶させる。
- 本間はリカを車に乗せようとするが、リカに麻酔薬を注射され、意識を失う。目覚めたときは針金で椅子に縛られ、身動きが取れない状態。目も閉じられなくなっている。
- リカが自分をバラバラにしようとしていると悟った本間は、命乞いをするが、リカは構わず本間の目に麻酔薬の入った注射針を近づける。
- もうだめかと思った時に刑事の菅原が乗り込んできて、拳銃でリカに2発発射。胸と腹に命中し、リカは救急車で運ばれる。
- 部屋に戻り、安堵する本間。しかし菅原から「リカが逃げた」という連絡。本間の部屋のドアから鍵の回る音がする。
- その後、廃病院で、本間の指、手のひら、肩から先、足首、脚、舌、耳、唇、鼻が発見される。本間の体はリカが持ち去っている。医師の所見によると、本間は死んでおらず、数時間で全身麻酔から目覚めるという。
第2部 最終回予想
公式サイトのあらすじには「本間の同僚、探偵、刑事、そして妻と娘と周囲を巻き込んだ壮絶なストーリーは、予想外の結末を迎えることになる。」と書かれています。「予想外の結末」というからには、原作以上の驚きがあるのかもしれません。
「妻の浮気が原因で別居中」という設定変更を考えると、恐ろしい事件の後、妻とよりを戻す展開になるのではないかと思います。
リカとの対決の末、リカは死ぬ(死体は見つからない)。大きな問題に共に立ち向かった妻と和解し、親子3人で暮らし始める。平和な毎日が戻ったと思った矢先、実はリカは生きていて本間を拉致。そして全身麻酔をかけられて…
さすがに、テレビドラマでは、生きたままバラバラにされて、耳も鼻も削がれているというのは映像的に酷すぎるので、そこまではしないでしょう。リカに監禁されるが、目を奪われて、逃げることもできない。たとえ逃げられたとしても、もう二度と愛する妻や娘を見ることはできない、というような絶望のラストを迎えるのではないでしょうか。
ただ、『リハーサル』のリカの最後の言葉が『リカ』の結末の伏線になっているように、ドラマも第1部のラストが最終回の伏線になってくると思います。第1部ラストのリカの言葉に注目が必要です。
第2部「最終回」の答え合わせ
「恐ろしい事件の後、妻とよりを戻す展開」という展開は当たりでしたが、これは「妻の浮気が原因で別居中」という設定から当然予想できることでした。
リカが死亡するというような予想は全くの見当外れ。ほぼ原作通りの展開でした。
リカとの対決の後、本間は椅子に縛られ、リカは手術道具などをテーブルに並べます。
「あなたの手も足も全部もらう。目も口も全部リカのものよ。隆雄さんの目が見えなくなっても口がきけなくなっても。私は決して隆雄さんを見捨てたりしない。下の世話もちゃんとするわ。私が一生隆雄さんのそばにいて面倒を見てあげる。そうすればリカの愛は本物だって分かるでしょ」
リカが全身麻酔の入った注射器を本間の目に刺そうと近づけた時、菅原刑事が踏み込む。リカは撃たれ、そして逮捕されるという展開は原作通り。
平和な日常が戻り、本間のもとに妻と娘が戻ってくる日。チャイムが鳴り、「おかえり」とドアを開けると立っていたのはリカ。テレビには「入院中の雨宮リカ容疑者 看護師を殺害し 警察病院から逃走」というニュース速報。リカの「ただいま、隆雄さん」というリカの笑顔でドラマは終わりました。
原作小説『リカ』の単行本発行時のラストは、ドラマのようにリカが逃走して戻ってくるまで。その後、本間の体を切り刻む内容は文庫本化で付け加えられたものです。
テレビドラマなので残酷描写が避けられたのかも知れませんが、高岡早紀さん演じる<リカ>の笑顔で終了したのは、今後の恐ろしい展開を予感させ、このドラマの最終回に相応しい場面になったと思います。
(2019年12月3日追記)
原作に登場しない女性
夏菜さん演じる「丘留千秋」
ドラマ版『リカ』には原作にはいない、夏菜さん演じる「丘留千秋(おかどめちあき)」という女性が登場します。第1部ではリカのターゲットとなった大矢昌史(小池徹平)の勤務する病院の受付をしています。第2部ではリカの第2のターゲット本間隆雄(大谷亮平)の映像制作に関わっています。
丘留千秋は、第1部では「病院内で巻き起こる不可解な騒動や人間模様を観察してはツイッターに投稿」、第2部では、「映画制作部の周囲で起きた日常の出来事を匿名でツイッターに投稿している。」役です。
ツイッターは今では当たり前になっていますが、ツイッターのサービス提供開始が2006年7月。『リハーサル』は1990年代、『リカ』は2000年代前半の設定なので、まだ原作の時点ではツイッターは登場していません。ドラマ版『リカ』は現代の設定に変わっているということです。
ドラマなどでネット検索する場面には、架空の検索サイトが出てくることが多いです。『リカ』の場合は、ちゃんと「ツイッター」の名前が出てくるということは、「ツイッター」が重要なアイテムになっているということです。ドラマの進行に合わせて、丘留千秋が現実の「ツイッター」に投稿するというようなこともあるかも知れません。
第1部で、リカと同じ病院に努めながら、無事生き残った丘留千秋、第2部では犠牲になるのでしょうか?小説の『リカ』シリーズは、『リターン』『リメンバー』と続きます。ドラマ版『リカ』でも、続編があるとすれば、丘留千秋は犠牲にならずに、ツイッターで事件の背景を発信する役割を担うことになると思います。
ドラマ『リカ』の最終回、丘留千秋は、事件を間近に見てきた「生き残り」として「『リカ』はまだ生きています。あなたを狙っています。気をつけて」というような、「ドラマの中の世界」と「現実世界」に向けて警告を発するシーンで終了するのではないでしょうか。
丘留千秋の答え合わせ
<丘留千秋>についての予想は大外れ。現実世界の「ツイッター」に登場することはなかったですし、リカに対する警告もありませんでした。
ツイッターで事件を投稿する場面はありますが、それは本筋とは関係なく、第1部では看護師長の転落事故に疑問を投げかけ、第2部ではリカのスパイとして、リカにターゲット本間の情報提供する重要な役回り。
もし、ドラマ『リカ』の続編が作られるなら、ぜひまた、重要な役で出演して欲しいです。
(2019年12月3日追記)
まとめ
- 原作小説の「リカ」は「恐ろしい見た目」と「酷い体臭」のモンスターとして描かれているが、ドラマの「リカ」は外見は普通の美しい女性。ドラマ版は、外見は普通だが、精神的に恐ろしいものを抱えているという「サイコスリラー」として描かれる。
- 『リハーサル』原作の第1部は、ほぼ原作通りに話が進むが、整形手術部分はカットし、最後は大矢の手のみ持ち帰るのではないか。
- 『リカ』原作の第2部は、親子3人の平和な生活が戻った矢先に、死んだはずのリカから拉致され、目を奪われるという展開になるのではないか。
- 「丘留千秋」は原作には登場しない女性。「リカ」に関する情報をツイッターで発信する役なので、現実世界のツイッターでも情報発信するのではないか。
「『リターン』、そして『リバース』は、書かれるはずのない小説でした。」原作小説『リハーサル』のあとがきで、『リカ』の作者、五十嵐貴久さんは、こう記しています。
作者は『リカ』の後、続編を書くことを勧められたが、断ってきたそうです。しかし「ある段階から、「リカ」に共感を抱き、自己を投影し、「リカ」と自分に相似点があると考える方、更には「リカとはわたしのことだ」と強く感情移入する人が増えている、と感じるようになりました。」ということから、続編である『リターン』、リカの誕生秘話『リバース』が書かれることになります。
その後、作者は、全ての年代の読者に対応するために、「『リカ』シリーズは、クロニクル(年代記)として書かれるべきだ」という思いに至ります。理由は、「なぜなら「リカ」は「あなた」だからです」。そして、ドラマ『リカ』の第1部の原作である『リハーサル』の出版に至ります。
原作小説のように、ドラマ『リカ』も、『私の中にも「リカ」がいるのではないか』という思いで見れば、別の見方ができるかも知れません。
以上、「ドラマ『リカ』原作小説との違いをネタバレ解説!最終回まで大胆予想!!」でした。