毎年6月、10月頃に行われることの多い衣替えですが、制服のある幼稚園、保育園に通っている子ならば、毎日着ている園の制服が一斉に変わって、風景が一変します。街では中学生、高校生の制服が変わりますし、警察官を見かけることがあれば、夏は青いワイシャツ、冬は濃紺の制服に替わっていることに気が付きます。一斉に服が替わったりするので、小さな子どもには新鮮な驚きがあるようです。
子どもは衣替えについて、「どうしてみんな一緒に服が変わるの?」「なぜそんなことするの?」など、素朴な疑問をぶつけてきたりします。あなたはどんな説明をしますか?
子どもに説明するために、衣替えとはどんな歴史や意味があるのか 、確認してみましょう。
衣替えの歴史
子どもからの、「なぜそんなことをするの?」という疑問に答えるために、まず衣替えの歴史を見てみましょう。
衣替えがいつから始まったかというと、平安時代からだそうです。もともとは中国の習慣だったようですが、それが日本に伝わり、旧暦の4月1日と10月1日に着物を替える「更衣(こうい)」という宮中行事となりました。それが庶民の間にも広まる中で、「更衣」ではなく、「衣替え」というようになりました。
江戸時代では、幕府は旧暦の4月と10月に加えて、5月5日と9月9日の年4回の衣替えの日を定め、着る物もそれぞれ指定しました。
明治時代に入り洋服文化になると、政府は役人・軍人・警察官の制服を洋服にして、夏服と冬服の衣替えの期間も、現在のような新暦の6月と10月に決めました。中高生の制服である、学生服やセーラー服はもともと軍服からきているので、学校の衣替えもその流れにあるのでしょう。
近年になって新たに始まったのがクールビズです。公官庁では、5月1日から9月30日までノーネクタイとしていて、民間企業もそれに準じているようです。クールビズも衣替えの新たな歴史と言っていいでしょう。
毎年、何気なく行っている衣替えですが、長い歴史と変遷があることが分かりますね。
衣替えの意味
平安時代からの古い歴史のある衣替えという文化ですが、現在、衣替えとは、どんな意味があると子どもに説明したらいいでしょうか。
まず、分かりやすいのは機能的な面です。これから暑くなっていく季節には夏物を着用し、寒くなっていく時期は温かい服を着るというのを、最初に説明しないと、小さな子どもは混乱するかもしれません。その上で、日本では昔からある行事であることなどを、子どもに分かる言葉で話してあげるといいと思います。
学校や職場など、共同でなにかを行う集まりの中では、皆一斉に同じ服を着るということで一体感を出すという効果があります。幼稚園や保育園の制服が変わるときには、「もっとお友達と仲良くなれるよ」というように説明してあげてはいかがでしょうか。
家庭での衣替えは、6月と10月などというように、決まった日にすることではなく、季節に応じた服装に替えるということですが、子どもの服装を替えるときには、「春っぽくていいね」とか「秋らしくて素敵」とか褒めてあげれば、季節に合わせた装いにすることが大事だとわかってくるのではないでしょうか。
衣替えの時は、着ていた服をチェックするのにはいい機会です。傷んでいる部分を直したり、クリーニングに出したり、半年間着なかった服は処分してもいいでしょう。子どもと一緒に、「これはもう小さくなったね」とか、「これは次も着られそうだね」と確認していけば、整理整頓の気持ちよさや、ものを大切にすることなどを感じてくれるのではないかと思います。
子どもに、衣替えの歴史や意味を説明する必要あるの?
ここまで読んで、衣替えとはどんな意味があって、どのような歴史があるか、子どもに説明する必要があるの?と疑問に思うかもしれませんね。
『行事育』という言葉を聞いたことはありますか?これは、テレビやラジオなどでも活躍している、和文化研究家の三浦康子(みうらやすこ)さんが提唱しているもので、食事の知識や経験で子どもの食生活を豊かにする『食育』のように、日本の年中行事を大切にすることにより、子供の人生を豊かにするというものです。
三浦康子さんによれば、年中行事を大切にする『行事育』により、「根っこになる」「絆になる」「心豊かになる」「賢くなる」「元気になる」という5つの力がつくということです。
1つ目の「根っこになる」というのは、日本人としてのアイデンティティをしっかりつくることで、様々なことを吸収する根っこのような礎にするということ。衣替えなどの行事を通して、歴史を教えていけば、これから色々なことを覚えていくベースになるのではないでしょうか。
2つ目の「絆になる」というのは、行事を通して家族や親戚、友達や地域の人との絆が強くなる効果です。季節になると、同じ行事に参加したことが思い出され、人生の大事な要素になっていきます。家庭での衣替え、そして学校などで一斉に制服を替えるという体験は、思い出として残り、折りに触れ思い出されることでしょう。
3つ目の「心豊かになる」は、風流を理解する心や、おもてなしの心など、行事の中にある伝統文化に触れることで、日本人らしい心を身につけること。歴史のある衣替えの意味を理解することで、日本文化について考えることは大切だと思います。
4つ目の「賢くなる」は、伝統文化としての行事を行うことで、その中に込められている知恵や知識を得て、礼儀作法を身につけるということです。服装をキチンとすることは礼儀の一つですから、衣替えは、それを知るいい機会になります。
5つ目「元気になる」は、日常の仕事を休んでお祭りに出たり、晴れ着を着たり、ご馳走を食べることによって、気晴らしをして元気になるということ。衣替えで季節に会った服装に替えることで、気分がリフレッシュする感じがしますね。
この5つは、どれも、親として子どもに身についけてもらいたい力ですよね。衣替えを単なる家事ととらえると、毎年の面倒な作業になってしまいますが、子どもの将来を豊かにする教育の機会と考えれば、親子にとって貴重な時間になるのではないでしょうか。
まとめ
- 衣替えが行われていたのは平安時代から。初めは宮中行事だったが、やがて庶民の間でも行われるようになった。
- 年中行事を通した教育『行事育』の点からも、子どもに衣替えとはどういうことか、歴史や意味を説明することは大切。
衣替えとはどんな意味があるか、調べてみると長い歴史があり、「一体感を出す」「季節に合わせた装い」「服の確認の機会」など、いろいろな意味があることがわかります。それを子どもに対する『行事育』の機会としてとらえれば、より大切な意味が出てくると思います。
子どもの頃、衣替えの時期になると、時間を掛けてタンスの中を入れ替えてくれていました。今思い出しても感謝の気持ちがわいてきます。衣替えを通して、子どもの疑問に答え、行事を大切にする姿を見せることで、子供の人生を豊かにする機会にしていきたいですね。
以上、「衣替えとは、どんな意味があるか子どもに説明できますか?2020年の今、考えたい衣替えの意味と歴史」でした。